この記事でわかるポイント
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会社の立ち上げ起業家を目指すのならこの資金調達方法がおすすめ
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さらに高い確率で審査に通る方法があるのでそれがわかる
コロナ渦の影響で世界経済が揺れる中、倒産の危機にひんする企業も目立つようになってきました。
いわゆる、コロナ関連倒産というものですが、意外な事に例年の倒産より、コロナ渦の最中の方が倒産率が低くなっているといった傾向がみられています。
これは、思いのほか、政府によるコロナ対応がうまくいっているものなのか、なかなか判断のつかないところですが、確かに政府のコロナ政策は、決して間違った対応ではないことを物語っています。
今回はそんな、日本政策金融公庫に関する話題と、金融公庫を申し込む方法について詳しく解説していきます。
日本政策金融公庫とは
日本政策金融公庫は、日本に5つある政策金融機関のことで、政府が出資する株式会社である為、政府系金融機関とも呼ばれています。設立されたのは2008年のことで、政府の行政改革の一つとして、新たに株式会社日本政策金融公庫として発足しました。設立当初は、国民生活金融公庫 / 農林漁業金融公庫 / 中小企業金融公庫 / 国際協力銀行の国際金融等業務を合わせて持つ、4つの政策金融機関が統合されたものでした。
しかし2014年に、国際協力銀行は再分離され、現在日本政策金融公庫の仕組みとして、残されているように、国民生活金融公庫 / 農林漁業金融公庫 / 中小企業金融公庫の3つが枠組みとして残されました。実はこの日本政策金融公庫ですが、沖縄を除く46都道府県が管轄地というのは、意外と知られていないようです。何やら、沖縄県だけ差別しているように見えますが、沖縄には同様の組織として、沖縄振興開発金融公庫が同様の機関として機能を果たしています。
日本政策金融公庫の主な業務は、基本的に前述した3つの前身機関を引き継いだもので、それぞれ国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫の業務を引き継いでいるものです。現在は、それぞれ国内金融業務として、国民生活事業 / 農林漁業事業 / 中小企業事業の名称で引き継がれています。またほかにも、危機対応円滑化業務というものがあります。
この日本政策金融公庫の危機対応円滑化業務とは、国内外の金融秩序の混乱や、大規模災害時などの危機発生時に対応するものす。今回の新型コロナウイルスの対応も、こうした業務機関が中心となって対処しています。日本政策金融公庫は、財務省所管の特殊会社として認知されている機関です。一般的な名称として、公庫が用いられることが多いものですが、私たちの生活に最も身近な融資機関として知られています。
日本政策金融公庫の融資制度の種類
日本政策金融公庫は、国民や事業者に対して、低金利で融資を行う機関として運営されています。前項で述べたように、日本政策金融公庫の事業の柱となるのは、
- 国民生活事業
- 農林漁業事業
- 中小企業事業
の3つとなります。
新規事業に関する融資としては、これらの各事業のうち、国民生活事業の融資が適しているため、こちらの融資制度に焦点を合わせて解説していきます。
農林漁業事業及び中小企業事業については、次の機会に解説しましょう。
国民生活事業
個人事業主や、小規模事業者向けの融資を行うのが、国民生活事業の主な業務となります。短期から中長期の融資を行っており、融資限度額や貸付期間に関しては、ご利用の制度や売る借り主の状況によって異なってきます。国民生活事業で、対応する融資制度はかなり多く、幅広く対応しているということもあり、ご自分に見合った制度を分かりやすく簡単に説明していきます。国民生活事業の貸付制度は、以下の通りとなります。
一般貸付
教育ローンなどを含む、小規模事業者向けの新規開業資金や設備投資、そのほかの小口資金の融資向けです。業種にかかわらず、事業を営む方であれば、どなたでも申請する事ができます。
セーフティーネット貸付
別名、経営環境変化対応資金とも、称されているのがこのセーフティーネット貸付です。コロナ渦の影響もあり、最近よくセーフティーネットという言葉を、耳にする方も多いのではないでしょうか。この制度は、売り上げの減少などでの経営の悪化、あるいは取引き先の倒産などにより、経営に支障をきたした際に利用できる融資制度です。また、金融機関の経営破たんにより、資金繰りに困った場合などにも利用することができます。
新企業育成貸付
名称を見てお分かりのように、新規に事業を開始される方に対して、企業を育成するといった意味で、行われている融資制度です。この新企業育成貸付には、現在5つの制度が適用されていますので、それぞれに簡単な説明をしておきましょう。
新規開業資金
新たに事業を開始する方及び、事業開始後おおむね7年以内の方が対象です。
女性/若者/シニア起業家支援資金
新規開業資金制度に準じます。
再挑戦支援資金
再チャレンジ支援融資とも呼ばれ、過去に廃業歴等のある方及び、一定の要件を満たす方が対象です。
新事業活動促進資金
事業転換や経営多角化により、新たに事業を開始する方が対象です。
中小企業経営力強化資金
経営力強化を図るための融資制度です。
企業活力強化貸付
どうしても地方の企業は、都市に集中する企業に比べると弱い立場であり、決して体力があるとは言えません。企業活力強化貸付は、そんな中小企業の体質強化を図るとともに、地域の活性化を図る趣旨で設立されたのが、この融資制度の本質です。現在この企業活力強化貸付には、8つの融資制度がありますので、順を追ってご紹介しておきましょう。
企業活力強化資金
店舗の新築及び増改築、機械設備の導入を行う事業者が対象の融資制度です。
IT活用促進資金
情報化の推進を図るための融資制度で、例えば営業において、タブレット端末などIT機器を用いる場合などがこれにあたります。
海外展開/事業再編資金
海外展開を図るための融資制度ですが、基本的には海外進出を図る事業者の為の制度といえます。
地域活性化/雇用促進資金
地域の事業者に対して、承認地域経済牽引事業計画に基づき、事業を行う事業者が対象です。また、雇用につながる設備投資などの資金に使える融資制度です。
ソーシャルビジネス支援資金
ソーシャルビジネスとは、社会的な問題などの課題の解決を目的とし、寄付金などの外部資金だけに頼らず、続的に収益を上げるための事業をいいます。
一過性のものではなく、継続的に社会的価値を生み出す事業で、NPOや共同組合、非営利団体であることがほとんどです。
2015年2月から始まったこの制度ですが、こうした事業者を対象とし、設備資金や運転資金などに融資を行うものです。
事業承継/集約/活性化支援資金
事業継承は、後継ぎに事業を託すという意味ですが、会社の赤字や老朽化の問題、あるいはコスト面などの問題で事業継承が進んでいかないのが現状です。
こうした企業の活性化を支援するため、設備資金や運転資金を融資する制度が、この事業承継/集約/活性化支援資金にあたります。
観光産業等生産性向上資金
日本経済の活性化を図る上でも、欠かすことができないのが観光産業の充実です。
世界的にも日本は、アニメ文化の認知度の高さや世界遺産などがあり、海外からの観光客もずいぶんと増えてきました。
訪日外国人旅行者など、消費需要の取り込みを含め設備の充実は欠かせません。こうした需要に対して、運転資金を含めた融資を行うのが、観光産業等生産性向上資金の趣旨です。
働き方改革推進支援資金
働き方改革とは、個々の自由な働き方に対して、誰しもが自分で決める事のできる取り組みの事です。
日本では少子高齢化が進み、労働者が減る一方、若年層でも就職できない不可解な構造が出来上がりつつあります。
虐げられている派遣社員問題もその一つで、こうした取り組みに着手する企業に対して、支援を行う意味で、この融資制度が設けられました。
環境/エネルギー対策貸付
環境/エネルギー対策資金
省エネ設備や非化石エネルギー設備の導入、または環境対策の推進を図る事業者が対象の融資制度です。
社会環境対応施設整備資金
環境及びエネルギー対策に着手し、防災目的で施設整備対策の実施を支援する融資制度です。
企業再生貸付
企業再建資金
名称でお分かりのように、企業の再建を図る事業者の為の融資制度です。ただし、中小企業再生支援協議会の関与、もしくは民事再生法に基づく再生計画の認可が条件となります。
そのほかの融資制度
被災及び新型コロナウイルス関連
災害関連は、被災に関する被害に、遭われた事業者を対象とする融資制度です。
- 災害貸付
- 東日本大震災復興特別貸付
- 平成28年熊本地震特別貸付
- 平成30年7月豪雨特別貸付
- 令和元年台風第19号等特別貸付
- 令和2年7月豪雨特別貸付
- 設備資金貸付利率特例制度
岩手県/宮城県/福島県内の事業者で、雇用の維持または拡大を伴う、設備投資を目的とする事業者が対象となります。
新型コロナウイルス感染症特別貸付
新型コロナウイルスの影響を受け、売上が減少するなど業況が悪化している事業者が対象で、売り上げ減少などの証明が必要となってきます。
新型コロナウイルス感染症対策挑戦支援資本強化特別貸付
新型コロナ対策資本性劣後ローンとも呼ばれる融資制度です。新型コロナウイルスで、会社にダメージを受けた事業者で、スタートアップ企業や事業再生に取り組む事業者が対象となります。
商工会関連の貸付制度
マル経融資
小規模事業者経営改善資金とも呼ばれる貸付で、商工会議所など長の推薦を受けている必要があります。したがって、商工会議所/商工会の会員である必要があり、かつ都道府県商工会連合会の実施する経営指導を受けている事業主が対象となります。
小規模事業者経営発達支援資金
商工会議所/商工会から、経営発達支援計画の認定を受けた事業者で、事業計画の策定/実施の支援を受け、持続的発展に取り組む小規模事業者の方が対象となります。
個別の融資制度
食品貸付
食品関係および、花き小売の小売業/製造小売業事業者で、店舗の新築/増改築または機械設備の導入、フランチャイズチェーンへの加盟などを行う事業者が対象です。
挑戦支援資本強化特例制度
資本性ローンとも呼ばれる貸付で、創業/新事業展開/海外展開/事業再生などに取り組む中小企業、及び小規模事業者が対象となります。
例えば、地域経済の活性化により、一定の雇用効果が見込める、地域に不可欠な事業であること。また、技術力の高い事業などに、取り組む事業者がこれに該当します。
担保を不要とする融資
税務申告を、2期以上行っている事業主が対象です。
経営者保証免除特例制度
事業資金を利用される事業主で、経営者保証に関するガイドラインの要綱を満たす場合は、経営者保証の免除が受けられる制度です。
新創業融資制度
新規で事業を始める方、または事業開始後で、税務申告が2期終えていない事業者を対象としています。
生活衛生貸付
生活衛生と聞くと、病院やクリニックなどの事業者が、対象と思ってしまいがちですが、それは少し早計というものです。
実を言うと、生活衛生貸付の対象事業者は、和洋中の飲食店のほか、喫茶店や精肉店及び旅館やホテル、美容室や理容室/クリーニング店から公衆浴場まで、かなり幅の広い事業者も利用可能です。
これらの事業は、生活や衛生に関わる重要な仕事であり、日本の経済の根幹ともいえます。
これらの事業に対して、街の自営業の多くをカバーする貸付制度が、生活衛生貸付の本質とも言えるでしょう。また、生活衛生貸付の特徴としては、融資限度額の幅がかなり大きく、制度によってはかなり高額の融資が見込めるところにあります。
今回の新型コロナウイルス関連の融資もありますので、該当する事業主は、資金調達方法の視野の一つとして検討されるとよいでしょう。
一般貸付
(生活衛生貸付)
- 振興事業貸付
- 生活衛生改善貸付
- 防災/環境対策資金
- 環境対策関連貸付<特例貸付>
- 生活衛生新企業育成資金
【国の教育ローン】
《教育一般貸付》
【恩給/共済年金担保融資】
《恩給/共済年金担保貸付》
国民生活事業の生活衛生貸付につきましては、どのような制度があるのかを簡単に紹介させていただきました。それぞれの制度の違いは、ご利用いただける事業者の条件、そして融資限度額と融資期間が異なっていることです。新規事業に関連するのは、一般貸付と新企業育成貸付、そしてその他の項目で紹介した新創業融資制度となります。また、規模や業種によっては、中小企業事業及び、農林水産事業の貸付制度をご利用される方もいらっしゃるかと思います。簡単ではありますが、双方の事業の概要を記載しておきましょう。
【中小企業事業】
いわゆる、中小企業向けの長期事業資金の貸付を行う事業で、融資額が1億円以上とかなり高額であるのが特徴です。ただし、短期での運転資金などの取り扱いはありません。個人事業主や、小規模事業者であれば、国民生活事業の制度を利用し、比較的規模の大きな中小企業であれば、こちらの中小企業事業の制度を利用することになります。
【農林水産事業】
農林水産事業は、農業と林業そして、漁業関連の事業を営む方が対象となる貸し付けを行っています。農林水産事業には、小規模事業者から中小企業までありますが、貸し付けに関してはこちらで対応しています。ほかの事業形態とは異なり、多少異なる部分がありますので、専門性を生かした貸し付けが行われているのも、農林水産事業の特徴と言えるでしょう。
日本政策金融公庫に申し込む方法と審査が通りやすくなる手段
日本政策金融公庫の融資の特徴は、一般的に利息が安いとされている銀行融資よりも、さらに低い金利で借り入れができるところにあります。当然、審査に関しては、かなり厳しいことが予想され、審査が通ったとしても融資実行までにはかなりの時間がかかります。
1か月や2カ月かかるのも普通ですので、こうした融資を受ける際には、計画性が最も重要なウエートを占めます。国民生活事業の借り入れで、必要となる書類は、該当する借り入れ制度によって異なってきます。お申込みに必要な書類は、日本政策金融公庫の公式ホームページ内でのオンラインサービスを利用します。
各書類は、この公式ホームページより、各ファイルをダウンロードできるようになっています。同様に、記入例や関係資料の入手なども、ダウンロードが可能ですので、該当する必要書類は、すべてこちらで入手しておきましょう。
申し込みは、各都道府県の市町村にある支店で受け付けています。各支店は、平日のみの営業で、朝9時~17時まで行っており、ご相談なども受け付けています。貸付制度によって、必要な書類は異なってきますので、日本政策金融公庫の公式ホームページで確認するか、各支店のご相談窓口で事前確認しておきましょう。
申し込みに関しては、必要な書類をそろえて、各支店の窓口に提出することになります。国民生活事業の教育ローンや、新型コロナウイルス感染症に関連する貸付などは、インターネットでの申し込みも可能です。
ただし、必要な書類を提出したからと言って、すべての人が融資を受けられるとは限りません。というのも、日本政策金融公庫は、国の機関でもある為、利用者に対して厳格な審査が求められるからです。
貸付制度によっては、条件が設定されていることもありますので、しっかりと確認したうえで申し込みを行う必要があります。個人での貸し付け申し込みは、どうしても信用度が低いため、融資が下りにくい傾向にあります。
しかし一方で、金融公庫の融資が、通りやすくなる手段があることも事実です。では金融公庫の融資で、最も審査が通りやすくなる手段をご紹介しましょう。それは専門家に、融資のサポートを依頼するという方法です。
具体的には、商工会議所や信用保証協会を利用することにより、政策金融公庫を受けやすくするというものです。商工会議所は、いわば事業者と保証協会の橋渡し役であり、様々な金融相談にのってくれるため、融資がスムーズに受けられます。ただし、商工会を利用していくためには、会員になっておく必要があります。
参照 URL: https://www.jfc.go.jp/
日本政策金融公庫を利用するメリットとデメリット
お金を借りる側にとって、利息の支払いが低ければ低いほど、利用者側に支払いの負担が減ります。
日本政策金融公庫は、小規模事業者を始め、様々な中小企業を低金利の貸付によって支えています。当然の事ですが、融資に際しては、様々なメリットとデメリットが存在します。
したがって利用する側は、日本政策金融公庫を利用する際のメリットとデメリットを、しっかりと把握しておかなければならないということです。
そこで、金融公庫を利用する、メリットとデメリットを個別に記載してみましょう。
メリット
《民間の金融機関に比べて利息が安い》
民間の金融機関では、会社の財務状況によっては金利が高くなります。しかし、日本政策金融公庫の場合、そうした財務状況に関係なく金利が適用されています。
無担保あるいは無保証の融資が受けられる
通常融資では、代表者が保証人となり、担保を必要としません。また、創業融資に関しては、無担保/無保証での融資が受けられます。
審査のハードルは意外と低い
民間の金融機関と比べると、日本政策金融公庫の審査は、比較的甘いと言われています。ただし、状況によっては審査に落ちてしまうこともあります。
民間に比べるとスピーディー
銀行など、民間の金融機関は審査がとても厳しく、融資が実行されるまでには、1か月以上を有することもざらです。貸付制度にもよりますが、日本政策金融公庫の融資は、実行までにほぼ1か月程度とされています。
民間金融機関からの融資が受けやすくなる
支払い状況や完済状況によって異なりますが、日本政策金融公庫の融資を受けることにより、信用度が上がるといったメリットがあります。
デメリット
審査に落ちてしまうとしばらく申し込みができない。
審査に落ちてしまう原因としては、次のようなことが考えられます。
- 信用情報に問題がある
- 公共料金や税金を延滞している
- 自己資金が足りない
- 面談での印象が悪い
- 事業計画書に無理がある
この中で、特に信用情報に関しては、各種ローンやクレジットカードの滞納状況などが、把握されていることを理解しておきましょう。
初めての借入は提出書類が多い
初めての借り入れの場合、どうしても調査資料が必要である為、提出書類が多くなってしまいます。
担当者によって得手不得手がある
借入に際しては、担当者が応答する事があります。担当者によっては、門外漢ということもあり、話しが通じにくいという事が役所ではよくあることです。事業内容に理解してもらうだけでも、時間がかかってしまう為、誰にでも分かりやすく説明できる技量も必要です。
参照 URL: https://keiei-2nd.com/jfc_loan/
まとめ
金融公庫がなぜオススメであるのか、それは銀行などの融資と比べても、審査のハードルも低く、金利が安いという事を真っ先に挙げる事ができます。
また、融資のタイプによっては、新創業融資制度を始め、初めて事業を行う方でも簡単に申請する事ができるからです。
日本政策金融公庫の借入申し込みは、個人でも行うことが可能です。
ただし、状況によっては、制度そのものを把握しておく必要があり、さらに有利な借り入れが行える可能性もあります。
したがって、場合によっては、商工会を利用した方がよい場合もあります。
メリットとデメリットを踏まえ、上手にこうした制度を利用していきましょう。
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